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 『緊急事態の時の放送局員』

2011/03/12(Sat)

今朝3時58分に発生した震度6弱の地震。
正直、死ぬことを意識しました。
中越地震より激しい揺れを感じました。
我が家の家の中は、
メチャメチャになりました。

実は直前の3時50分頃。
僕はコタツで目覚めていました。
前夜収録で遅くなり、深夜0時頃帰宅し、
遅い夕食を食べて、
そのままコタツで倒れていました。
そして目覚めたのが、
地震の8分前…。
愛犬・鈴に毛布をかけて、
トイレに行き、二階の自室に行きました。
布団に入ろうとしたその瞬間。
いきなり突き上げる揺れと、
我が家が激しくきしむ音を聞きました。
倒れそうになった瞬間に停電。
停電して真っ暗な中。
必死で部屋を出て階段を下りながら、
オヤジとお袋を呼びました。
頭の中で最悪の自体がよぎっていました。
幸い暗闇の中から返事がして、
オヤジもお袋も鈴も無事でした。
しかし、家の中は様々な物が散乱しメチャメチャな状態でした。
懐中電灯でラジオを探し、
スイッチを入れて情報を集めると、
長野県北部が震源で、
震度6弱との情報でした。
落ち着くまで30分くらい家にいて、
緊急放送の為スタジオに向かおうとカバンを取り、
オヤジとお袋に

「緊急放送するから会社に行く。すまない。」

「こっちは大丈夫だから、気をつけて行ってこい。」

と暗闇の中でオヤジの声がしました。
懐中電灯の灯りに照らされて、
愛犬・鈴が不安そうにキョロキョロしていました。

と言って外に出ました。
外に出ると驚いたことに、
除雪をして道を出した雪の壁が崩れ、
道が全部埋まっていました。
足を雪にとられながら家を出て、
携帯電話を取り出しましたが、
携帯電話は会社に繋がりませんでした。
車に乗って走り始めました。
最初の道は雪崩で通行できず、
一旦引き返して別の道を走りはじめました。
時々段差があり車が跳ねました。
ラジオをつけると高野アナが緊急放送を始めています。
別な道を進むと二箇所で雪崩があり通行止め。
引き返そうとしたところ、
除雪車がやってきました。
除雪車が先導し二箇所の除雪を終えました。
お礼を言って先を急いだところ、
その先にまるで山のような雪崩があり、
あまりの規模の雪崩に、
一時車を出て、ライトに照らされるその威容な光景をしばらく呆然と眺めました。
そこに緊急地震速報の音が携帯電話から流れ、
車に乗り込み、急いでその場を離れました。
その後車で会社に向かう車の中では、
停電して真っ暗な家に残してきたオヤジとお袋と鈴のことが頭から離れません。
時々『引き換えそうか・・・。』と思う自分と、
『多くの被災した皆さんの為に情報を放送をしなければ・・・。』と思う自分がせめぎ合います。
車の中でそんな想いを打ち消そうと何度も『クソッ!!』と叫んでいました。
僕達放送局員と言う仕事の辛い一面を経験しました。

局に辿り着くと、
先に到着した同僚が情報収集をしたり、
情報をまとめたり、
放送したりしています。
皆、家族を家に残し、
情報をいち早く届ける努力をしていました。
しかし、誰も不安を顔に出さずに頑張っています。
その顔を見て僕も勇気をもらい。
その後放送に加わりました。

本当に長い一日でした。
夜帰宅してオヤジとお袋、鈴の無事な姿をみて、
やっと緊張から解かれた感じがしました。
停電と電話の不通は解決しましたが、
断水は続いています・・・。

今夜はコタツで雑魚寝をします。
明日も一日スタジオから情報を流すことになりそうです。

緊急事態が起こったら、
放送局員は心を強く持って行動しなければならないと、
あらためて思いました。

では・・・。


佐藤広樹



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